全国で700余店の薬局をチェーン展開する日本調剤(本社東京都)では、一部店舗に、地域住民の健康づくりをサポートする二つの「ステーション」を設けています。「健康チェックステーション」と「認定栄養ケア・ステーション」の二拠点です。ステーションでのサービス内容や開設の意図などについて、実際にステーションの業務に携わる石神井公園薬局(東京都練馬区)、管理栄養士の山崎 桜さん、薬剤師の林 愛子さん(以下、敬称略)にお話をうかがいました。
今回は、(左)管理栄養士の山崎 桜さん、(右)薬剤師の林 愛子さんにお話をお伺い致しました。
―「健康チェックステーション」と名付けられた専用ブースには、さまざまな測定機器が設置されています。
山崎 血圧計や握力計はもちろんのこと、体脂肪率や筋肉量などが測定できる体組成計のほか、脂質や糖尿病に関連するHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)が測定できる簡易血液検査などを設置しています。処方箋がなくても、特に体調に問題がなくても、いつでも気軽にご利用していただけるよう配慮し、常駐する薬剤師と管理栄養士が、測定結果を基に生活習慣改善のためのアドバイスなどを行っています。
血液検査では、cobas(コバス)という指先からの微量な血液採取で検査が出来る簡易検査機器を用いて検査を行っています。
林 当薬局では皮膚科を中心に様々な処方内容の処方箋を応需し、主に高齢者を対象にした在宅訪問も実施しています。薬局にはそうした処方箋調剤を中心とする「かかりつけ」機能のほか、国民の主体的な健康の保持増進を積極的に支援する「健康サポート」機能が求められています。健康チェックステーションは、そうした健康サポート機能の強化を目指す薬局内施設です。弊社では2016年12月から設置を開始し、当薬局では2017年7月に専用ブースを設けました。
店内やホームページに案内を載せており、処方箋がなくてもいつでもお気軽にご相談いただけます。
―薬局内にそのようなコーナーがあることは、まだよく知られていません。
山崎 ご自身の健康状態をチェックできるスペースが薬局にあることを地域住民の方に認知していただくため、店頭での掲示やチラシによる告知、さらには近隣住宅へのポスティングなどに注力しました。また、毎月さまざまな健康イベントを薬局内外で開催していますが、その際、健康チェックステーションのご案内もしています。イベントに参加される方は元々健康意識が高いこともあって、反応は良いですね。さらに、待合室にいらっしゃる患者様はもちろん、初めての処方箋患者様には体組成のチェックができることなどをご紹介し、利用者増につなげています。
*新型コロナウイルス感染症の状況を十分鑑み、徹底した感染防止対策を行った上で、適宜実施判断をしております。
月ごとにイベントの内容を変えており、血管年齢の測定や糖尿病関連のイベント等、多数実施してきました。
イベント時に機械を使って骨の健康測定を行っている様子です。
―管理栄養士を常駐させる薬局が増えてきました。
山崎 管理栄養士がいることで、疾患を抱えた方だけではなく、未病・予防の観点から幅広い世代にアプローチできる強みがあります。高齢者の健康意識に比べると、若年層の健康意識はまだ低いように感じています。定期的に行っている糖尿病や血圧・筋肉量関連などの啓発活動を通じて、そうした未病層の健康意識の高揚と浸透を図っていきたいと考えています。
―健康チェックステーションを設置している薬局数は全国でどのくらいですか。
山崎 2022年4月現在で80店舗です。4月1日現在、当社の店舗総数は709店舗なので、全体のおよそ一割の薬局に健康チェックステーションがある計算です。
―もう一つのステーション、認定栄養ケア・ステーションでは地域住民の栄養ケアに注力されています。
山崎 日本栄養士会の認定を受けた事業所で、管理栄養士が地域住民の栄養ケアの支援・指導を行う拠点です。2021年9月に認定栄養ケア・ステーションとして認定され、2022年4月現在で29店舗になりました。また、管理栄養士が所属している店舗は、栄養ケアを提供することができます(約60店舗に在籍)。地域住民の食に寄り添い、栄養ケアの支援と指導を通じて、豊かで健やかな生活維持ができる地域社会づくりを目指しています。
―医療機関との連携もあるのでしょうか。
山崎 栄養指導が必要な患者様には医療機関に協力をお願いし、医師から、食事の処方箋に当たる「栄養指導指示箋」を出していただいています。医療機関の診察時には、栄養指導のための十分な時間が取りにくいこともあります。薬局で行った栄養指導の内容については医療機関に報告し、連携を深めています。
―管理栄養士の活躍の場も拡がります。
山崎 市区町村に、薬局が認定栄養ケア・ステーションを取得していることは、まだあまり知られていません。薬局内での栄養指導にとどまらず、今後、特定保健指導をはじめとする栄養関連サービスの提供や、自治体、健保組合などを対象にした料理教室の運営、献立立案など、地域の認定栄養ケア・ステーションの拠点として機能を強化していきたいと思っています。
医薬品や健康食品も多数販売しているため、ご来局者さまご自身で必要な商品の購入や薬剤師・管理栄養士へのご相談も可能です。
中でも売れ筋が良い商品です。特に「大人のケアミルク」は、年代問わず食べやすく、女性に人気の商品です。
―本日はどうもありがとうございました。
いつのまにか薬局は、処方箋がないと入りづらい店になっていきました。日本調剤では「健康チェックステーション」の展開で、処方箋を持たなくても気軽に健康測定や相談ができる店づくりを目指しています。また、健やかな生活をおくるためには、未病・予防への取り組みも欠かせません。「認定栄養ケア・ステーション」の意義が高まります。
Activeプラス編集部