長崎県長崎市川平町にある有限会社ななしま薬局。
今年25周年を迎えるななしま薬局では、薬剤師がお客さんのご自宅へ訪問する在宅医療が、まだ一般的にはあまり知られていなかった開局当時から訪問をし続けています。そこには、今まで支えてもらった地域の人たちに恩返しをしたいという気持ちが込められています。
今回は、在宅を始めたきっかけや実際の取り組み、その他学校薬剤師としての活動についてななしま薬局の七嶋和孝先生（以下、敬称略）にお話をお伺いしました。
―在宅を始めたのは開局当時からということですが、何年くらい経つのでしょうか。
七嶋 開局当時から在宅をはじめて25年。初めは少なかったですが、徐々に増えて現在は120件程になり、月の訪問回数は400を超えるくらいです。自分が行けないという場合も考えて、薬局全体で対応できるようにしています。
今回取材にご協力いただいた七嶋和孝先生（真ん中）。地域の方と健康教室を行ったときの写真です。―在宅を行うようになったきっかけを教えてください。
七嶋 国立病院で病院薬剤師として業務を行っている時に、ドクターに在宅を一緒にやろうと誘われたことがきっかけで平成9年に、ななしま薬局を開局しました。
当時は、介護保険も何もない状況で、体制が整っていないところから始めたので、周りからはお金にもならないのに馬鹿だなんて言われましたね。でも、在宅をするのはドクターとの約束だったから、綺麗事を言うと一生懸命やってきたという感じですが、現実はしがみついてきた。頑張ってきたという感じでした。
―まだ、薬局の薬剤師が在宅を行うイメージがあまり知られていないということもあり色々な苦労があったのですね。
七嶋 在宅という言葉を医療人にすらあまり知られていない時代だったので、患者さんに１から説明して納得してもらってから始めるというかたちでしたね。やはり、はじめはみなさん負担金のことを気にされるのですが最終的には、「あんたがくると楽だね」と喜んでもらい、自分が患者さんの家を訪問する姿を地域の人が見て認知されるようになり、在宅の活動が広がっていきました。
25年間続けてこられたのは、地域の人たちの支えがあったからこそ。ずっと外来に来て下さっていましたが、最近では、通えなくなった患者さんもいるので、今まで育ててくれてありがとうという感謝の気持ちを込めて在宅を続けていきたいですね。
在宅業務をするだけでなく、患者さんとのコミュニケーションも日々大事にしています。
―学校薬剤師としても活動されているということですが、どのような取り組みをされているのでしょうか？
七嶋 薬局を開局したときに協力して欲しいと誘われて、学校薬剤師になると同時に薬物乱用指導員にも任命されました。
生徒さんの中にリストカットやいじめを経験したことがある人がいて、自己肯定感の低さというところから薬物やリストカット、いじめに逃げたりするのではないかと自分の中で思うところがあり、自己肯定感を高めるような講話を交えながらやっています。
単なる講演ではなく生徒参加型にして、発信だけの講演会にならないように子どもたちの反応をみながら伝えていきます。1回の講演で伝えるのは難しいかもしれませんが、小・中・高と段階に合わせて最終的には伝わって欲しいという想いで継続しています。
自分が伝えたいことがしっかり子どもたち伝わっているか、様子を見つつ、子どもたちの将来を考えて講演会を行っています。
―現在の取り組みを踏まえて地域薬局として今後実施したいことや目標はありますか？
七嶋 自分たちが長崎に薬局を作って25年。地域で暮らす人たちの健康の窓口として学校を通じて子どもたちの成長を手助けしたり、在宅をしたり、自分１人でできないことは仲間と一緒にやったり、多くの人たちに助けてもらった分、地域に貢献していくことで恩返しをしたいですね。
また、薬局の機能を変えるためにも、医療の入り口と出口を絶対キープしておかなければいけないと思っています。相談しにくる薬局、医療のゴールとして処方箋を受け取りにいく薬局、自分たちスタッフも一丸になってやっていかないといけないと考えています。
「地域に恩返しするのは、当たり前のこと」と薬局の中だけではなく、在宅、講演会などさまざまな活動を行っている七嶋さん。地域の人たちに対する、大切な想いが伝わってきましたね。取材協力ありがとうございました。
本日は取材にご協力ありがとうございました。
Activeプラス編集部