PICKUP薬局

たむら薬局栄町店

PICKUP.031
地元愛で育んだ“超”地域密着型のかかりつけ薬局

東京都 練馬区
たむら薬局 栄町店

気軽に入れて何でも相談できる場所――小さな頃から通いつめた地元の薬局に憧れ薬剤師になった、たむら薬局(東京都練馬区)の田村憲胤さん。地域との深いつながりが縁で、若くして地元の薬局を承継し、今では生まれ育った練馬・江古田の小商圏で4店舗を展開しています。多くの薬局が処方箋調剤に軸足を移す中で、処方箋を持たない地域住民らとの距離を遠ざけてしまい、薬局は気軽に訪れる場所ではなくなっていきました。地域に根差し、信頼される薬局、薬剤師となるために成すべきことは何なのか――。江古田から出ないと決めた、そんな“江古田愛”に満ちあふれる田村さん(以下敬称略)に、自店の現状と将来についてうかがいました。

―西武池袋線の江古田駅を取り囲むように4店舗を展開し、“超”地域密着型薬局を標榜されています。

田村 2013年に自社のクレド(=行動指針)を定め、「地域の方々の健康で豊かな暮らしに必要とされるかかりつけ薬局」を経営理念に掲げました。地域住民にとって、気軽に何でも相談できるような存在を目指しています。

古くから、薬局薬剤師は「町の科学者」といわれ、博識で、気軽にいろんな相談にのってくれる存在でした。ところが、地域で一番身近な存在であるべき薬局が、増加する処方箋調剤に追われることで、いつの間にか遠い存在になってしまった。薬局薬剤師はcare(一般用医薬品等の販売)からcure(保険調剤)まで関われる、地域住民が一番最初に接する医療職です。そのためには調剤だけではなく、価値ある商品や情報を提供し、地域に根差した「顔の見える薬剤師」でなければなりません。

―薬局経営のスタートは事業承継とうかがいました。

田村 幼少期から親しくしていた近所の薬局に憧れ薬剤師になったのですが、その薬局には跡継ぎがいなかったことから承継の打診を受けたのがきっかけです。大学卒業後、ドラッグストアに就職してまだ1年ほどのころで、1号店となる栄町店の開局は、卒業後5年目の2005年のことでした。その後も地域の縁で2軒の薬局を事業承継し、4店舗目の小竹町店が唯一の自主出店店舗です。

たむら薬局小竹町店

唯一の自主出店店舗である小竹町店

―江古田駅を中心に4店舗は徒歩圏で近接しています。

田村 実は出店エリアの拡大を狙って失敗した苦い経験があります。地元の薬局の姿に憧れて今がある。隣町のことは分からない。失敗したことでビジョンがずれていたことに気付き、地域の実状を把握し、地域の人々の健康に貢献したいと思い直しました。ビジョンを明確にし、健康で豊かな暮らしに必要とされるかかりつけ薬局を目指したい。江古田から出ないことを決めたのです。

現在、4店舗で月平均4,000枚の処方箋を400以上の医療機関から広域に応需しています。4店舗間の相乗効果で地域シェアは25%まで高まり、商品の販売などを通じて地域住民との関係性を深めることで、結果として処方箋枚数も伸びていきました。

たむら薬局地図

近距離圏内に店舗を構え、江古田の街に根差すことを目指しています

―日頃の薬局運営で留意されていることは何ですか。

田村 来店された方とコミュニケーションのための時間が十分とれるよう、特に調剤業務では可能な限りの機械化・ICT化を進めてきました。専用アプリで処方箋の送信や相談ができる環境もつくり、4店舗の薬歴や検体測定値などの全情報をクラウドで一元管理しています。また、常駐の管理栄養士が食の側面から健康をサポートしたり、地域包括支援センターと連携した相談会(=街角ケアカフェ)や「子ども薬局」といった体験会も開催しています。

健康食品

処方薬のみならず、OTCや食からも健康をサポートしています

―試行錯誤で行き着いた“超”地域密着志向ですが、強い組織づくりには社員のビジョン共有が不可欠です。

田村 2013年のクレド制定を境に、残念ながら去って行った社員も少なくありません。そのような事が極力ないよう、入社時の面接では当社のビジョンに共感を前提として、社員として迎え、ミーティングを繰り返し、時間をかけて社員とのビジョンの共有化を図ってきました。また、2021年には的確な人事評価制度を制定するなど、より働きやすい環境づくりに努めています。

―今後、地域密着をどのように深めていくお考えですか。

田村 地域の“ライフガード”になれれば、と思っています。何もないときは見守る。有事の際は真っ先に駆けつける存在になりたい。それが、地域に密着した薬局のあるべき姿ではないでしょうか。

今、物流業界では、顧客に商品を届ける最後の物流区間を意味する「ラストワンマイル」という言葉が盛んに使われています。薬局の現場では、薬歴を通じて顧客の背景や課題が見えてきます。高齢のため買い物難民になっている。あるいは独居生活を強いられている。困っている地域住民に、必要なものを薬局の専門家が届ける。薬局が、そんな地域住民のラストワンマイル問題をカバーし、careからcureまで1番近くで気軽に相談できる存在になれれば、薬局の存在意義は「薬をもらえる場所」ではなく、「健康をもらえる場所」になるのではないかと考えています。

―本日は取材協力いただきありがとうございました。


田村さんの両親は音楽家で、親戚に薬剤師がいるわけでもありません。結果として承継することになった薬局の薬剤師は、何でも話を聞いてくれ、店内の薬や健康食品が、まるで宝箱のように見えたと述懐されます。そんな“原点”が、たむら薬局の店内のあちこちに散りばめられているようです。

Activeプラス編集部

1外観の写真

東京都 練馬区
たむら薬局 栄町店

薬局情報

名称たむら薬局 栄町店
住所〒176-0006 東京都練馬区栄町32-8
URLhttps://www.tamura-pharmacy.com/shop.php
電話03-3948-2277

地図・アクセス

江古田駅北口から徒歩2分