石川県能登半島にある穴水あおば薬局では、小児科が近いことから子どもたちが喜ぶような店舗づくりや安全を考慮してホッチキスの針を使用せずに複数の薬を服用時ごとにひとまとめにすることができる「トジスト」を開発するなどの活動をしています。
同薬局の管理薬剤師である原将充先生と薬剤師の岡田政彦先生(以下敬称略)にお話を伺いました。
―店舗づくりで工夫していることはありますか。
原 私たちの薬局は小児科の門前にあるので、子どもが来局したくなるような仕掛けがたくさんあります。お店の入り口にボタンを押すと音が鳴る踏切を設置したり、店内には鳩時計やおもちゃ、薬袋にはキャラクターが描かれたものを使用したりすることもあります。色々な工夫をすることで薬局を好きになってもらい、その薬局からもらった薬も好きになってもらえたら嬉しいなと思っています。
踏切は知り合いに協力してもらい制作した力作です。受診を終えた子どもたちが走ってボタンを押しに行くほど、とても楽しんでくれています。
―「トジスト」を開発したきっかけを教えてください。
岡田 介護施設に薬を持っていくときに、服用する数種類の薬をひとまとめにして欲しいというご要望があり、最初はホッチキスを使っていました。
ある時、「ホッチキスの針を使わないでまとめることはできないのか?」という相談が薬局に届き、理由をきいたところ、針が危ない、取り外すときに破れて困るということでした。
ホッチキスの代替としてテープのりや両面テープ、セロハンテープを試してみたところ、
患者様が薬を飲む時に外しにくい、薬局で作業しにくいなどのデメリットがありました。そこで、強い力で圧力をかけ用紙をデコボコに密着させてくっつける「ハリナックス」という道具に注目しました。薬剤師向けに使いやすさを追求する為、この技術の特許を持っている会社に相談して共同開発に至りました。
トジストを使用した様子です。綴じ目に沿って水平に剥がしていくと簡単に開きます。一旦剥がしたあと、やり直しをした場合でも1度目と同等の力で綴じることができます。
―患者様からの反応はいかがでしたか。
岡田 アンケートを実施したところ、とても好評でした。薬局や介護施設など現場にいる人からは、作業効率が上がったという声もたくさんいただきました。
「トジスト」を導入するにあたり、コストの面で悩んでいる人も多いので、現在コストと重量を約半分に抑えて再開発をしています。機械を軽くすることで持ち運びを可能にして、在宅訪問にも役立てたいと考えています。
現在約200店舗の薬局が「トジスト」を導入しています。
―CAPプログラム(子どもへの暴力防止活動)を実施したきっかけや取り組み内容を教えてください。
原 東日本大震災で被災した子どもたちの、心のケアについて考えていたところ、隣接している小児科の先生にCAPプログラムを教えてもらったのがきっかけです。
子どもへの人権意識や安心自信自由の権利が自分にあることを理解してもらい、様々な暴力から心と身を守るプログラムとして取り組みを行っています。
いやだと言う、逃げる、相談する等の方法をわかりやすく説明するために地域の小学校に出向き寸劇を交えたワークショップ形式で伝えています。
様々な理由で心にダメージを受けた子どもたちや今後想定される事態に向け、「自分は大切だ」と子どもたち自身に認識してもらえるよう取り組みを行っています。
保護者の反応としては、忙しくて子どもの話を聞けていなかったという気づきがあります。また、学校の先生からは、相談してくれる子どもが増えたという話も聞いています。
地域のCAPを届けているグループの力を借りて薬局主催の健康教室を開催し地域の人々に「人権の話」ができるようになりました。この活動が広がってくれたら嬉しいですね。
学校だけでなく幅広く活動を行って行くことで、地域全体で子どもたちを守ってあげられるようになりたいです。
―今後、取り組みたいことはなんでしょうか?
岡田 薬局を出て地域の人たちに役立つような健康情報をもっと発信したいですね。病院診療所よりも敷居が低い薬局という環境で、薬剤師も相談しやすいのだと住民の意識も変えられるように、これからも活動していきます。
―穴水あおば薬局の皆さん、
取材協力ありがとうございました。
冬には小児科と一緒にイルミネーションやプロジェクションマッピングを行っています。受診している子供たちに事前に動物を塗り絵してもらい、プロジェクションマッピングに登場させることで喜んでくれています。
Activeプラス編集部