田無本町調剤薬局では、最先端のロボット技術で調剤業務を安全かつ効率化する医薬品の自動入庫払出システムを導入しています。業務の効率化で生まれた時間を服薬指導の充実強化にあてることで、患者満足度も高まっています。同薬局を運営する(株)田無薬品執行役員・薬剤師、磯部紀子さん(以下敬称略)に導入のメリットなどを伺いました。
お話を伺った、田無薬品執行役員・薬剤師 磯部紀子さん
―調剤ロボットの導入は都内で初めてとか。
磯部 2020年8-9月に、調剤室・待合室併せての大改装をして、医薬品自動入庫払出システムを導入しました。1986年の薬局開設以来、備蓄医薬品が増え続け薬品棚の拡充整理が追い付かなかったため、薬品の所在を即座に判断ができず、スタッフの導線も悪くなっていました。
当薬局の１日平均の処方箋応需枚数は150～160枚です。受付医療機関は約150施設/月と多岐にわたる処方箋に対応するため、医薬品の備蓄は2,000品目を超えています。業務効率が限界に近づいていたことが導入のきっかけでした。
リニューアルした薬局の内観（待合室、カウンター、Vmax）
待合室のリニューアルに伴い設置した受付順番管理システム「まちみる」は、店内に待ち受け番号が表示されるだけでなく、スマートフォンでも表示を確認することができます。待ち時間中に買い物などで外出するなど、待ち時間の有効活用が可能です。
―導入のメリットはなんでしょうか？
磯部 調剤時に薬品棚を巡って動き回ることがなくなり、処方箋と薬歴・更には患者様と向き合う時間に集中できるようになったことが大きいです。導入前は、処方内容を調剤前に監査する態勢は十分ではなかったのですが、導入後は調剤前に患者様と薬剤師がお話し、処方内容や薬歴の確認を徹底しました。処方医への必要な疑義照会などもこの段階で行うので、処方受付から投薬までの流れがスムーズになり結果として患者様の待ち時間の軽減にもつながっています。また、服薬指導はもちろんのこと、患者様とのさまざまなコミュニケーションが深まることで、患者満足度もアップしたのではないでしょうか。国が進める調剤業務の「対物」から「対人」へのシフトチェンジという流れの中で、薬剤師が患者様により付加価値の高い業務を提供する上でも、システムを導入した意味合いは大きいと思います。
さらに薬剤師の業務負担の軽減、ストレスフリーにもつながっています。正確で迅速な薬剤のピッキングが可能になった自動入庫払出システムのおかげでヒヤリハット事例・調剤過誤は低減し、在庫管理や棚卸作業も非常にスピーディーです。
2020年9月に都内で初めて導入された日本ベクトン・ディッキンソン社の医薬品自動入庫払出装置「Rowa Vmaxシステム」。最先端のロボット技術で調剤業務を安全、迅速、的確に行い業務を効率化。機敏なロボットアームの動きが、薬局業務の先進性を待合室の患者に訴求します。
ここから医薬品を出し入れしています。
―患者様に向き合う上で、また日々の薬剤師業務を実践する上で、心掛けておられることはありますか？
磯部 「四つの目」を持つようにしています。一つ目は「鳥の目」、広い視野で物事を俯瞰する目です。二つ目は「虫の目」で、近くで物事を詳細に把握する。三つ目は「魚の目」で、時代の流れを読み取ること。そして四つ目は「心の目」で､これは物事の本質や目的手段を見極める目です。リスクマネジメントを学んでいるときに出会った言葉で、これら「四つの目」を大切に日々の業務にあたれるよう、若い薬剤師らにも紹介しています。
―今後、取り組みたいことはなんでしょうか？
磯部 まずは「健康サポート薬局」の認定を取得すること、一般用医薬品や医療材料等の取り扱いも今以上に拡充して、地域密着の度合いをさらに深掘りしたいと考えています。また、改正された法律にそって、がんなどの専門的な薬学管理に対応した薬局を目指していきたいと思っています。
西武新宿線・田無駅を中心に半径500メートル以内に４店舗を展開する(株)田無薬品は、発足以来、地域医療への貢献をモットーに発展してきました。在宅医療に参画するほか、専門薬剤師を講師とする健康講座の開催や西東京市が主催する市民祭り、子育てフェスタ等でのお薬相談会の参加など、地域への情報発信にも熱心に取り組んでいます。
田無薬品 田無本町調剤薬局の皆さん
取材協力ありがとうございました。
Activeプラス編集部