SPECIAL

ドリーム薬局 新横浜店

SPECIAL.009
漢方でより患者さんの満足する状態を目指す

ドリーム薬局 新横浜店
(神奈川県横浜市)
鎌田 優子氏

昨今、医師の9割が漢方薬を処方していると報告されています(※)が、漢方薬の取り入れ方は医師によって様々です。ドリーム薬局新横浜店の鎌田優子氏は、処方意図を把握し医師の治療方針に寄り添った服薬指導を実践しています。豊富な漢方の知識と経験がある鎌田氏ですが、患者さんには漢方の専門用語は使わず平易な言葉を使うことを徹底しており、患者さんの体質や体調を捉えて服薬指導をすることで副作用の早期発見にも繋げています。
※日本漢方生薬製剤協会 2011年漢方薬処方実態調査より

漢方薬のエビデンスが多数報告され、診療ガイドラインへの掲載は増加傾向

―鎌田さんが漢方を深く学ぶようになったきっかけを教えてください。

鎌田 私が漢方を深く学ぶようになったのは、漢方専門の薬日本堂株式会社へ就職したことがきっかけです。薬日本堂では患者さんにカウンセリングを行い、漢方独自の診断法「証」を取り、体質や体調に合わせて煎じ薬を選定するため、漢方の基礎となる中医学から必死に勉強しました。その後、保険調剤の経験が必要と考え調剤薬局へ転職しましたが、あの時の経験は現在も大きく役立っています。

漢方薬の特徴として適応が多岐にわたることが挙げられます。そこが面白い所であり、また難しいところでもあります。例えば、葛根湯は風邪の初期に使用されますが、整形領域では首・肩こりの凝りの初期にも処方されます。このように適応が多様な漢方薬は、まず処方意図を把握することが重要です。患者さん本人から状態を聞くことはもちろんですが、処方元の該当領域の診療ガイドラインに掲載されている漢方薬の確認は基本になります。

近年、漢方薬に対するエビデンスが多数報告され、ガイドライン掲載漢方薬を、多くの医師が選択するようになりました。消化器領域の場合、機能性ディスペプシア(FD)では六君子湯が推奨度A、胃食道逆流(GERD)では六君子湯と半夏瀉心湯はPPIとの併用により症状改善が得られると記載されています。従って胃の不快感に対し六君子湯は、早期に使用することで効果が高いことが分かります。因みに、各診療ガイドラインを調べると、頭痛で5処方、慢性便秘症では10処方にエビデンスの掲載があることが分かりました。ガイドライン掲載漢方薬から学んでいくと、実践に役立つ漢方薬の勉強が進めやすくなります。

一方、漢方薬の取り入れ方は医師によって様々なので、ガイドラインに記載がなく、資料を調べても明確にならないこともあります。そのような場合は、恥ずかしがらずに処方医に処方意図を確認するとよいでしょう。

漢方では患者さんの体質、体調を把握しておくことが特に重要

―患者さんへの服薬指導で心掛けていることはどんなことでしょうか

鎌田 漢方薬の服薬指導では、患者さんにできるだけ漢方の専門用語は使わずに分かりやすい言葉で説明し、理解してもらうことが大切です。例えば、月経困難、更年期障害、打撲症等に効果があり、婦人科でよく処方される桂枝茯苓丸の効能は、漢方用語で言うと「瘀血の改善」ですが、分かりやすく「血の滞りの改善」と表現します。

また、本来漢方では外観や声の様子などから患者さんの全体像を捉え「証」を取り、体質や体調を把握しますが、あまり難しく考えず「寒がり、または暑がり」、「体力がある、または疲れやすい」、など服薬指導の中で大まかに「証」を把握しておくと様々なことに役立ちます。西洋医学では同じ疾患名でも、「証」が違う場合は漢方薬が異なりますし、逆に全く違う疾患に同じ漢方薬が使われるケースもあるので、処方意図の理解に役立ちます。また、患者さんの「証」を知っておくことは、副作用回避に繋がります。例えば防風通聖散は肥満症、特に腹部に皮下脂肪が多く便秘がちの方に処方される、漢方でいう実証(体力のある方)向きの漢方薬です。しかし、太っているから実証とは限らず、太っていても体力がなく疲れやすい方もいます。そのような虚証の方が服用すると、下痢をしたり体力が低下するなどの副作用が出やすいので注意が必要です。必要な場合はすぐに疑義照会を行います。

また、漢方薬は複数生薬の絶妙な組み合わせで構成されており、体に優しいといわれますが、副作用もあります。比較的よく処方される漢方薬に含まれ、副作用に注意すべき生薬は麻黄、附子、大黄などです。麻黄の交感神経刺激作用による不眠、また附子は、体を温める効果が高いため、夏場は特に発汗やのぼせに注意が必要です。大黄は熱感や炎症に効果的ですが、体力低下時には下痢しやすい場合があります。当薬局ではこれらの生薬が含まれる漢方処方を表にしてチェックしやすいように掲示しています(図1)。

図1:副作用に注意が必要な生薬と漢方処方例(鎌田氏作成)

図1:副作用に注意が必要な生薬と漢方処方例(鎌田氏作成)

治療方針に寄り添った医師とのコミュニケーション

―現在の日本では西洋医学の中に漢方薬が取り入れられた処方が多くなっていますが、その状況をどのように思われますか?

鎌田 2011年漢方薬処方実態調査によると、昨今、医師の9割が漢方薬を処方しています。ただし、その漢方の取り入れ方は様々で、漢方医学を考慮した診断をする医師は約4割で、多くの医師は主にエビデンスをもとに処方していると報告されています。私は、医師の処方の取り入れ方に寄り添って、処方提案をしています。私自身、服薬指導の際、できるだけ患者さんの「証」を取りますが、エビデンスをもとに漢方薬を処方される医師には陰陽、虚実、気血水などの漢方用語は使用せず、暑がり、または寒がり、疲れやすい、または体力があるなど、現代用語を使用しています。

多くの患者さんが、漢方薬の効果はゆっくり現れるというイメージをお持ちですが、私は薬剤師として、漢方薬が漫然と長期間処方され、効果が乏しい場合は、処方の見直しや中止の提案をしても良いのではと考えています。では、効果が現れるまでどの位の期間様子をみるかというと、短いと2週間から、長いと1年など医師により様々な意見があります。その中で私は、6カ月を目安にしています。薬剤師から患者さんやご家族に、何らかの効果を感じているかお聞きすると、そこで初めて「そういえば、あまり効果が感じられない」と打ち明けてくださる方もいます。

―処方提案して、症状が改善した例があれば教えてください

鎌田 1件は、慢性頭痛で五苓散を半年間服用していた男性で、あまり症状が変わらないというので、『頭痛の診療ガイドライン』に掲載されている全5種類の漢方処方について、現代語で証と使い分け表を作成し提案したところ呉茱萸湯に処方変更になりました(図2)。服用2週間後、患者さんより劇的に改善したとうれしい報告がありました。

西洋薬のみを服用されていた患者さんの体質を考慮し、漢方薬を提案したケースもあります。若い女性の患者さんが、慢性頭痛で解熱鎮痛剤の服用を継続していましたが、胃腸障害で下痢を起こすので悩んでいるとの事でした。そこで水分代謝調節作用があり、頭痛にも下痢にも効果的な五苓散を提案したところ、服用1カ月後、頭痛が軽減され解熱鎮痛剤の服用回数が減り、下痢も改善。患者さんから本当にありがたいと喜ばれました。薬物乱用頭痛の回避にもつながり、本当に良かったと思います。

図2:鎌田氏の処方提案事例

図2:鎌田氏の処方提案事例

ポリファーマシー対策、複数の医療機関から処方された漢方薬に注意

―ポリファーマシー対策ではどのような提案をされるのですか。

鎌田 複数の漢方薬を服用されている患者さんには、減薬を検討することもあります。特に高齢者の場合、複数の医療機関から漢方薬が処方されているケースが珍しくありません。ある患者さんは、別々の医療機関からそれぞれ補中益気湯、人参養栄湯が処方され、2つの補気剤処方を服用していました。そこで患者さんの現状に合わせ1処方に減薬することを提案しました。ストレスや病後の食欲不振、疲労感がある場合は前者、重度疲労感、寝汗、不眠がある場合は後者を選択するように提案し、後者の人参養栄湯のみに減薬になりました。減薬後も良い状態が維持されています。

複数の漢方薬が処方されている場合、副作用についても注意が必要です。診療科の異なる漢方薬でも、構成生薬が重複し、副作用が出てしまう場合があります。特に、多くの漢方薬に含まれる甘草による偽アルドステロン症による、むくみや高血圧は注意が必要です。また、医療用漢方薬は148種あり、同じ薬効を持ちながら、構成生薬が微妙に異なる処方も多いため、2種から1種へ漢方薬を変更することも可能です。ある高齢の患者さんは、血行不良と不眠で、四物湯と酸棗仁湯を服用していましたが、不眠傾向が強くなったので、2つの処方の薬効を併せ持ち、さらに不眠に効果的な生薬が多い帰脾湯を提案しました。1カ月後には熟睡感が得られ、大変喜ばれました。

漢方薬に苦手意識を持つ薬剤師も多いと思いますが、患者さんの「証」を取り、体質や体調を把握することで、処方意図の確認や副作用のチェックに繋がります。さらに漢方処方の構成を理解することで、漫然処方の回避、ポリファーマシー対策に繋がります。まずはガイドライン掲載漢方薬から理解を深め、幅を広げていくと良いと思います。昨年、薬剤師から医師への漢方薬の処方提案について学会発表をしたところ、漫然処方への介入を是非して欲しいと、複数の医師より励ましのお言葉を頂きました。漢方薬への薬剤師の取り組みは、何より患者さんのQOL向上につながります。薬剤師としての職能を発揮できる領域ですので、ぜひ多くの薬剤師に取り組んでいただきたいです。


今回はドリーム薬局 鎌田 優子様にお話を伺い致しました。
ご協力頂きありがとうございました。

Activeプラス編集部

ドリーム薬局 新横浜店

神奈川県 横浜市
ドリーム薬局 新横浜店

薬局情報

名称ドリーム薬局 新横浜店
住所〒222-0026 神奈川県横浜市港北区篠原町3014-2
URLhttps://www.from-thirty.jp/store/shinyokohama.html
電話045-834-7046

地図・アクセス

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